“個人 対 個人”をベースに関係構築し、コミュニケーションは密にとる
中小企業の海外進出事例が増えるにつれ、文化的な違いに起因する問題に直面するシーンも増えてくる。問題の種は、取引先などの社外のみならず、現地採用の社 員など社内にも潜んでいる。だが、事前に進出する国の人々のものの考え方やビジネス文化の違いを知っておけば、対処できることも少なくないだろう。そこ で、中国、台湾ビジネスに精通している吉村章国際化支援アドバイザーに、中小企業の進出事例が多い中国について、中国人のものの考え方のもととなるメンタ リティを整理していただくとともに、中国人とのビジネス上の付き合い方や現地社員とのコミュニケーションなどについて、2回にわたって解説していただく。
“三本主義”が中国での成功のカギ
吉村アドバイザーによると、日本人が中国ビジネスで失敗する原因には、総経理の質、本社との関係、異文化コミュニケーションなど、さまざまな問題が複雑 に絡んでいるという。そこで、まずは「台湾企業が中国でうまくいく理由」を日本企業と対比させながら、問題点を整理していただいた。「台湾企業が中国で成 功する理由として、台湾人がよく言うのが『三本主義』というものです。これは、孫文が唱えた台湾建国の原則である『三民主義』(民族主義、民権主義、民生 主義)をもじったもので、中国進出には『本人主義』『本領主義』『本銭主義』の3つが重要だという意味です」
――まず、「本人主義」とはどういったことですか。
「これは、決定権を持つ本人自らが現場の状況を把握してビジネスを進める、ということです。台湾人は経営のスピードを非常に重視しており、特に、“調 査”、“立ち上げ”、“攻め”、“修正”、“撤退”の5つシーンでの重要性についてよく言及します。そのため、現場の状況をすばやく把握し、修正局面では 攻めたり引いたりしながらスピーディにビジネスを動かしているのです」 「一方で日本企業は、企業規模が大きいほど、調査、立ち上げ、実戦の各部隊がすべて異なる場合が多い。また、決定権を持たない人が派遣されることも少なく ないため、本社にいちいち確認をとらないと先に進めないなどの事態が発生するのです」「さらに、総経理として着任した人が、自分の専門領域以外の仕事をし なければならないということがよくあります。たとえば、品質管理や調達の専門家が財務や労務、通関から税務対策まで、総経理としての仕事をしなければなら ないケースもあるのです。 この場合、経営について十分な知識を持たないまま、人事・労務・総務全般から現地の政府担当者との折衝までをやらざるを得ません。これでは決定を下せま せんし、スピーディに事も進められません」
―次に「本領主義」とはどういったことですか。
「これは、文字通り自社の本領を発揮することです。日本でうまくいかなかったビジネスモデルを中国に持ち込んでも、成功するはずがありません。そこで、 『自社の強みは何か』を再考する必要がある、ということです」 「過去には、現地の状況を十分に把握せずに進出してしまい、結局うまくいかなかった、というケースも多くみられました。この反省から、経営・人的資源と いった自社の状況や強みを踏まえ、勝負するポイントを見極めてから進出すべきなのです。」
――最後に「本銭主義」です。
「中国や台湾の企業は『身の丈経営』、つまり無理なことはやらないのです。たとえば、台湾人は事業を始める際、手元資金や親類から集めた資金を元手とし、 事業が軌道に乗ってからも投資ファンドやエンジェルから資金調達するなど、銀行との付き合いをメインには考えていません。また、現地法人の利益を自国に持 ち帰らずに、再投資に回すケースも多いのです」 「一方日本企業は、『銀行との付き合いを大事にしないといけない』という意識があるうえ、現地で儲かるか、利益をどう持ち帰るか、といったことに注意が 行ってしまうために、うまくいかないということもあるのです」
――民族的に同じということで、台湾企業が中国で成功するという側面もあるのでしょうか。
「確かに、同じ文化的背景を持つためにコミュニケーションギャップが回避できる部分は大きいでしょう。しかし、プラスアルファとして重要なこともあるので す。台湾人も、中国ビジネスの難しさを日本人以上に知っているのです。言葉が通じることは確かに有利ですが、台湾人の強みはそれだけではありません。本質 は言葉プラスαの部分です。それが『三本主義』と言ってもよいでしょう」
台湾企業は日本企業以上に中国ビジネスの難しさを認識している。それから生まれたのが、「本人主義」「本領主義」「本銭主義」の「三本主義」。これが台湾企業の中国での成功のキーとなっている。
長期的な視点が求められる日本企業の中国進出
さらに近年では、「三本主義」にもうひとつ加えた「三本主義+1(プラスワン)」という考え方が主流になりつつあるという。
――「三本主義」に加えて、中国ビジネスで他にどんなことが重要ですか。
「近年は、『三本主義』に加えて『本土化主義』、つまり経営の現地化が重要だと言われるようになってきました。台湾企業が中国ビジネスを始める際に、総経理などは立ち上げから5~10年、なかには10年以上滞在することもあります。こうして優秀な現地社員を育てて経営の決定権を任せてから帰国するのです」
「一方日本企業は、総経理や責任者は3年や5年ごとに交代するのが主流ですが、実は総経理が交代する時期に現地社員が退職する確率が高いのです。そ の理由は、前任者の下にいた社員が、新しい総経理とうまくいかないなどということで辞めてしまうためです。これは人的・経営資源的に大変な無駄が生じるこ とになるのですが、日本企業ではこの問題に意外と目を向けられていません。台湾企業のやり方がベストとは言えませんが、現地に長期間赴任して現地の人材を 育て、いずれはその人に経営を任せる、という発想や長期的なビジョンが日本の経営者にはもう少し必要なのかもしれません」
――中小企業などは具体的にはどうすればよいのでしょうか。
「『3 ×3=8の法則』ということを言っている人がいるのですが、3年任期の総経理の3代目が離任する前年に、現地社員を総経理にして帰ってくる、ということで す。最初の総経理は事業の立ち上げ、次の総経理は事業の安定化(または拡大)と将来の総経理候補者探し(人材育成)、3人目の総経理は現地化の仕上げをす ることになります。中国ビジネスは非常にスピードが速いので、最初から想定どおりに事は運ばないでしょうが、まず“ビジョンをもつ”ことが大切です。こう したビジョンがあれば、不測の事態が起きた際の修正基準としても有効となるのです」
「あとは、トップが頭を切り替えることです。中小企業はトップダウンで決定を下せますから、社長さえ頭を切り替えれば、会社の方針として動ける訳で す。そうなると、究極の本人主義で、社長自らが総経理になることが理想ですが、現実的には難しいでしょう。その場合は、社長の分身となるような全権を委任 できる人に現地の経営を任せるか、早期から中国要員を育成することです」
近年台湾企業で言われる「本土化主義」のように、現地社員の登用については「3×3=8の法則」のような長期的視野が必要。その実現には、トップが頭を切り替えることが必要になってくる。
――そうなると、中国に送り込む人材が中国ビジネスの行く末を左右すると思いますが、どのようなことが人選のポイントになりますか。
中 小企業はやはり“強み”を活かさないと、中国での成功は望めません。ですから送り込む人材も、会社の強みがわかっていて、それを発揮できることが大前提で す。さらに、中国の会社経営における特殊性も知っておく必要があるので、着任前に研修や講座を受けたり、出張ベースで何回か現地に行き身をもって学んだり しておいたほうがよいでしょう」
「もうひとつ重要なのは、異文化理解です。食べ物が合うか、向こうで暮らしていけるか、極論を言えば中国が好きかというところに行き着きます。『行きたくない』という人に無理やり研修を受けさせても無駄ですから、人間的な“下地”があるかどうかを見極める必要があります」
良好な関係構築には意識の切り替えが必要
海外で行き違いや誤解を生む原因となるのが、ものの考え方の根底にある国民性、ひいてはメンタリティだ。そこで次に、中国人のメンタリティについて解説していただいた。
――中国人の会社に対する基本的な考え方というのは、どのようなものでしょうか。
「通 常、日本人の会社員には、まず会社があり、自分はその構成員だという感覚があります。さらには、無意識のうちに“内”と“外”の境界線を使い分けて人間関 係を区別しています。敬語を例にすると、係長が課長と話すときは、課長に対して敬語を使う、つまり、ふたりの間に境界線があるのです。それが係長と課長が ふたりで社長のところに行くと、『課長から発表させていただいた件は…』と、社長との間に境界線ができます。さらに、3人で取引先A社の社員Bを訪問する と、『私どもの社長はこう申しておりますが、B様はどのようにお考えでしょうか』と、今度はA社との間に境界線ができるのです」
「一方で中国人は、自分が所属するコミュニティとして『会社』という概念はないのかもしれません。そもそも、日本人のような内・外という感覚がな く、家族や友人、内輪の人を指す『自家人(zi ji ren)』と、それ以外の他人を指す『外人(wai ren)』というふたつの概念しかないと言われています。しかも、自家人と外人の間には非常に高い壁があるようです」
「さらには、日本では初対面から時間をかけて少しずつ人間関係を構築しようとしますが、中国では初対面の人にも急速に接近して、できるだけ早く関係 を作ろうとする傾向が強いと言えます。たとえば、中国人は親しくなった人に対し、親友を意味する『老朋友(lao peng you)』という表現をよく使いますが、本当に老朋友になったかというと、一概にそうとは言えません。ここから自家人への壁を越えるのが非常に大変なので す。ですが、いったん壁を越えれば、非常によい関係ができて、本当の老朋友となるのです。ですから、中国人との付き合いのなかでは、自分が今どの領域にい るのか、どこに入ろうとしているのか、というのを意識して見極める必要があるでしょう」
――つまり、中国人とよい関係を築くには時間がかかるということですか。
「時間がかかるというよりは、自分の意識の切り替えですね。懐に入るのは簡単なのですが、どうやって腹を割って中国人の懐に飛び込んでいくか、日本人がスイッチを切り替えるのに時間がかかるのです」
「たとえば、『中国では言いたいことが伝わらない』と言う人がいますが、それは『言いたいことの10分の1も言ってないから、伝わっていない』ので す。日本人の場合は、“以心伝心”というか、雰囲気や場の空気などで伝わることがあります。しかし、海外、特に異文化間ではそうはいきません。10伝える のに、15言わないと伝わらないこともあるかもしれない。それなのに5しか言わなければ、伝わるはずがありません」
「中国人に対しては、『どこが違うのか』ではなく、まずは『違う』ということに気づくことが大切だと思います。どこが違うかは、ひとつずつ体験していけばわかることでしょう」
人間関係の構築のしかたひとつをとっても、日中では考え方、風習が大きく違う。こうした違いに気づき、日本的な考え方から切り替えて、そこからどうするかを考えることが必要になってくる。
後編では、今回解説していただいたことを踏まえて、より具体的な人材活用の方法などについて、引き続き吉村アドバイザーにお話をうかがう。
前 回は吉村章国際化支援アドバイザーに、日本企業が中国ビジネスで失敗する要因を整理していただくとともに、日本人と中国人のメンタリティの違いなどについ てうかがった。今回は引き続き吉村アドバイザーに、中国でのビジネス上の付き合いの勘所や、ローカル社員活用のポイントなど、実務的な面からお話しいただ いた。
ビジネスでも“個人 対 個人”の付き合いがベース
前回の吉村アドバイザーのお話では、中国人は「自家人」と「外人」という概念で他者との距離を規定する、とのことだった。そうしたことは、ビジネスの現場でもみられるのだろうか。
――日本と中国のビジネス上の付き合い方での違いというのはどういったことがありますか。
「中国では、『会社対 会社』というよりは『個人 対 個人』で付き合う社会、と考えたほうがよいでしょう。たとえば、取引先A社の担当者Bさんと長年にわたって仕事をしていたとしても、『当社とA社』ではなく『Bさんと私』という関係でとらえていたほうがよいのです」
「こうしたことから、注意しておくべき点もあります。中国はジョブホップが盛んに行われますから、BさんがいつまでもA社にいるとは限りません。 さらに、Bさんが退職する際に、後任者への仕事の引き継ぎがあって当然と考えてはいけません。このため、Bさん退職後もA社と引き続き取引したい場合は、 一から関係を構築し直さなければならない場合もあるのです。このように、個人対 個人の付き合いがベースとなっている中国では、ビジネスの場でも意識の切り替えをしておかないと足元をすくわれかねません」
――では、ビジネス上の付き合いとしてはどのようにしていけばよいのでしょうか。
「Bさんとうまくやっていくには、濃厚な人間関係を構築して徹底的に付き合っていくことです。さらに、Bさんが退職した場合のことを考えて、Bさんのアシ スタントやフォローしている人、バックアップ体制がどうなっているかを押さえておくとよいでしょう。さらに、Bさんが部下などを引き連れて独立することも あり得ますから、Bさんの退職を察知する努力など、“会社対 会社”で付き合うのとはまったく違った感覚が必要でしょう」
――そういったことは、日本人の多くが苦手としています。
「そうですね。日本のビジネスの場では、会社の看板と肩書きを背負って『C社のDと申します』として付き合っていくのが普通です。一方、中国では個人対 個人の付き合いがベースになっているわけですから、『C社だからではなく、Dさんだから付き合っている』と相手が言ってくれるような人間関係を作る必要が あるのです」
中国ではビジネスの場でも「個人 対 個人」の付き合いがメイン。取引先の担当者とは個人的に徹底的に付き合って関係構築を図る。一方で、ジョブホップの可能性も高いので、それに備えた情報収集も必要になる。
個人に対する忠義心が強い中国人
こうした中国人のメンタリティは、会社への帰属意識にも反映されている。日本人とはどのような違いがあるのだろうか。
「中国では、会社に対する忠誠心というのはほとんど期待できない、と考えていたほうがよいでしょう。その代わり、個人に対する忠義心は非常に強い傾 向にあります。たとえば、大手E社の中国法人に勤めるローカル社員の多くも、E社の看板が欲しくて勤めているのではなく、『E社のF部長の下で仕事をして いる』という感覚なのです。ですから極端な話、独立する際に『私も一緒に行きます』と言われるくらいの人間関係をローカル社員とは作らないといけないので す」
――そういった人間関係は、具体的にはどのように作っていけばよいのでしょうか。
「こ れは中国人に限ったことではありませんが、人間としてきちんと向き合うことです。日本人はもっと『自分が何のためにここへ来て、あなたとどういう関係をつ くりたくて、この会社をどうしたいのか』ということを口に出して、ローカル社員とコミュニケーションをとったほうがよいでしょう。前回もお話ししました が、『言ってもわからない』ではなく、『言っていない』、あるいは『言い方が悪い』から『わからない』のです。こうしたコミュニケーション不足が続くと、 最悪の場合、ローカル社員との間に線を引いてしまい、『日本人による日本的な発想の日本的な経営』になりかねず、これではうまく行くはずがありません。 『違いを見つけて、それを前提にどうするか』という前に、お互いに『理解不能』としてギャップが生まれてしまう、というケースが多いように思われます」
「そして、自分から中国人にぶつかっていくという姿勢がもっとあってもよいのではないかと思いますね。そのうえで人間関係をつくっていくべきです」
中国人は会社ではなく個人に対する忠義心のほうが強い。ローカル社員との良好な関係を築くには、何事もはっきりと口に出して伝え、自らぶつかっていく姿勢が重要。コミュニケーション不足のままでは溝が深まる可能性が高い。
責任と権限、成果と報酬を与える
「中国ではジョブホップが頻繁に行われ、それによってキャリアを積んでいく、という意識もある。このため、せっかく将来の幹部候補と期待していた人材が突然退職してしまうリスクもある。優秀なローカル社員の人心をつなぎとめるには、どういったことが有効なのだろうか。
「これにはポイントが3つあります。ひとつは、繰り返しになりますが、自分の考えややりたいこと、目指していることをはっきりと口に出して言うこと です。『君たちを幸せにするためには……』など、日本であれば気恥ずかしくなるぐらいの言葉を使うのも有効です。そして、相手の言うこともきちんと聴く姿 勢が大切です」
「ふたつ目は、権限と責任の両方を与えることです。中国人の多くは、『自分は何のために雇われて、どういう仕事をすべきか』ということを強く意識し ていることが多いので、それを明確にして提示するのです。日本の組織のように、チームワークや連帯責任というのは通用しません。『これはあなたがやる仕 事』という権限と同時に、『やらなかったら、あなたの責任』という責任も与えるのです」
「たとえば中国では、Aさんが残業していても、同じチームの他のメンバーは先に帰ってしまうことが多い。それは、もし『手伝おうか』と他の人に言わ れたら、Aさんは『どうして私の仕事を取ろうとするのですか』『この仕事は私が任されて権限を与えられているのだから、取らないでください』と思うからで す。つまり、自分が任されたことと果たすべきことをしっかり認識しているのです」
「そして3つ目が、成果と報酬です。これは、『どれだけの成果を上げれば、どれだけの報酬がもらえるか』というのを明確にする、ということです。日 本のように、成果はチーム全員の努力によるものであるから、ボーナスは皆で均等に、というのではなく、『頑張った人は多く、そうでない人は少なく』と、差 をつけるのです。さらに、中国人は自分の能力を他者にアピールしたがる傾向がありますから、ボーナスの支給額などを社内報やプリントといった形で公表する 仕組みを作ることも必要でしょう」
「ここで重要になるのが、明確な基準を設けることです。日本では、人事の査定でも“協調性”や“将来性”といった漠然とした基準を設けがちですが、 これは人によって基準が違うため、中国では社員が不満を持ちかねません。ですから、中国で社員をうまく束ねていくのには、数値化された明確な基準を作り、 それに基づいて報酬に差をつけることが必要です」
ローカル社員の人心をつなぎとめるには、以下の3点が必要。・ はっきりと口に出してものごとを伝える・ 権限と責任をともに与える・ 成果と報酬を明確にする
――そうなると、管理者やリーダーの役割も日・中で違いが出てくると思いますが、いかがですか。
「そ うですね。日本ではリーダーが各メンバーに仕事を割り振ると同時に、各メンバーも他の人が何をやっているのかを把握しているのが一般的です。こうしたなか で、全体の業務を調整してチームとしての総合力を引き上げるのがリーダーの仕事とされています。ですから、Aさんが80%、Bさんが120%、Cさんが 50%の結果しか見込めないようであれば、リーダーがAさん、Cさんの仕事の一部をBさんや他のメンバーに再配分するなどして、最終的にチームとして 100%の結果が出るようにするのです」
「一方中国では、リーダーは各メンバーに仕事を割り振り相互につながっていますが、各メンバーは他の人が何をやっているかには関知しないのが一般的なのです。リーダーは、各メンバーが与えられた仕事に対して100%の結果を出しているかを管理するのです。ですから、AさんとCさんに成果を100%に近づけるよう指導することはあっても、Bさんなど余裕があるメンバーに仕事を割り振ることはほとんどありません」
このように、中国ではリーダーや管理職には日本とは異なる資質が求められる。こうした人材が現地法人で育成が難しい場合は、外部から採用することになるが、そのポイントについてもうかがった。
――現地で管理職の人材を採用しようとする場合、どういったことに注意すべきでしょうか。
「日本企業は、日本的な『現地での賃金相場』にとらわれすぎる感があります。たとえば、『課長職の相場は元』という固定観念に縛られて、元の能力しかない 人を探してしまう傾向があるのです。本当によい人材を採用したいのであれば、“まず賃金ありき”の発想を捨て、人材会社などに求めるスキルなどの要件を伝 えて、それを満たす人を探してもらうのです。中国では、月給1万元(約16万円)であれば、かなりハイレベルの人材が採用できます。つまり、業務によって 『いくら出せるか』という自分たちの基準を持つべきなのです。さらには、基準を満たしている人材であるかを見極める“目”を持つことです」
外部から人材を求めるときは、日本的な固定観念に縛られず、要求するスキルなどに応じて自らの基準を持つ必要がある。さらには、人材を見極める“目”も必要。
周囲との調和を第一に考える日本人と、個人を尊重する中国人。まったく異なる文化圏でビジネスをするという苦労は推して測ることができよう。「日本の常 識は世界の非常識」とはよく言われることだが、まずは両国の文化の違いを認識することからスタートし、現地の人々と良好な関係を築いて中国進出を成功裏に 終わらせていただきたい。
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