2009年3月26日星期四

アセアンに進出した日本企業が陥りやすい失敗点とその対処法(前編)_jp

アセアンに進出した日本企業が陥りやすい失敗点とその対処法(前編)

 労務管理に現地人社員を活用するなど文化の違いを意識しつつ、うまく管理を進める

  日本企業がアセアン諸国への進出を本格化させたのは1980年代のこと。20年以上の年月を経て、アセアンでのビジネス展開についてのノウハウもずいぶん蓄積されてきている一方で、失敗例がゼロになっている訳ではない。今回は、大手商社在籍時にマレーシアに6年間駐在した経験を持ち、現在は半導体検査機器メーカーのシンガポール現法のManaging Directorを務める数馬輝明国際化支援アドバイザーに、アセアンに進出した中小メーカーが陥りやすい失敗の具体例や盲点、そしてそれらの回避策などについて2回にわたってうかがった。

 日本製品の"完全コピー"が第一歩

 1980年代以降、「世界の成長センター」といわれるほどめざましい発展を続け、日本との結びつきも強いアセアン諸国。1997年の通貨危機以降、一時経済は落ち込んだものの、日本からの直接投資件数は、1951~2004年度累計で全体の約15%を占め、いまも投資エリアとしての人気は衰えていない。

 出所:日本アセアンセンター
日本の地域別対外直接投資


■件数

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■金額
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 ASEAN10はインドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア


 出所:「対外及び対内直接投資状況」(財務省)、「財政金融統計月報」(財務総合政策研究所)よりジェトロ作成

 数馬アドバイザーは、日本の中小メーカーがアセアンに進出する場合、まずポイントとなるのが「きちんと技術移転ができるか」だとする。

 「そもそも中小メーカーがアセアンへ進出する目的は、現地の労働者を使って日本よりも低いコストで製品を作り、それを現地で販売することが多いでしょう。その意味では、コストの高い日本人が現地で製造に従事しても意味がないのです。ですから、日本と同じ技術や製造プロセスを現地の従業員に教育することになりますが、この段階でつまずくと、後々失敗を招くことになるのです」

――技術移転は比較的容易にできるものなのでしょうか。

 「いいえ、これが非常に難しいのです。技術移転の前提となるのが『コピー』、つまり同じノウハウに基づいて同じ材料を使えば同じものができる、ということです。しかし、アセアン諸国では日本と同じようには行かないのが通常です」

――それはなぜでしょうか。

 「日本とアセアン諸国の文化の違いからくる品質への考え方の相違がその要因といえます。現地の完成品が日本の精度要求に一致しない(至らない)ケースが多いのですが、これは文化的な品質に対する違いといえます。これに対処するには、言葉を正確に使って技術を伝える必要があります。その点、アセアン諸国はシンガポールをはじめとして英語教育がしっかりなされている国が多いので、英語に限定するのがベストでしょう」

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 製造現場の管理はローカル社員に任せる

 文化の違いという点で、手を焼くのが労務管理だろう。ここであまり日本的マネージメントに固執すると現地スタッフの反感を買うことになる。ここでうまい労務管理の仕方というのはあるのだろうか。

 「実際の製造現場で問題となるのは、本質的な生産性向上のために工数をきちんと考慮して彼らを動かせているかです。失敗企業の多くは、『皆何となく忙しそうに動いているが、月末や期末の数字を見ると思ったよりアウトプットが上がっていない』というような状態が続き、それを放置して取り返しのつかないことになってしまうことが多いのです」

――そういう事態を避けるには、どうすればよいのでしょうか。

 「きっちりと工数管理をして、効率よく生産ラインを回すことです。例えばある現法の製造現場で、総労働時間のうち20~25%が朝の準備や機械の順番待ち時間などのアイドルタイムだとします。生産効率化のためには、これをいかに減らすかが問題となりますが、アセアンで失敗した企業の多くは工数を考慮して効率的に彼らを動かせていないケースが多いのです」



――上手な工数管理の方法などはありますか。

 「1980年代にアセアン進出を開始した当初は、日本企業は大きな影響力を持っていました。しかし、近年の欧米や中国企業の進出に伴い、日本の影響力は相対的に下がってきているのが現状で、日本流のやりかたを一方的に押し付けることはできません。現地に溶け込んで、現地の人間をうまく工数管理を教育する事が肝要です」

 「また、現地のことを日本人がやろうとしても無理があります。日本人が労務管理にまで手を伸ばすと、重点的に日本人がチェックすべき品質管理がおろそかになる可能性もあります。そこで、現地の考え方や行動をよく理解している現地人のマネージャーに製造現場の管理を任せるのです。中小メーカーは労働集約的な仕事が多いことから、工員に『生産性が上がることで賃金が払える』ということを理解させることができれば、工数管理も比較的容易に導入されるでしょう」

 「ただし現地人のマネージャーに管理を任せるとはいっても、日本人もちゃんと状況を理解しておかなければいけません。例えば、現在の工数がどれくらいで、それに対するアウトプットがどれくらいあるのか、というようなデータを入手し分析することは不可欠です」

 「いったん現地に任せたら『良きに計らえ』と、余計な口を出さないほうが良い、という考えの経営者も多いでしょう。しかし、それではローカルマネージャーの暴走を生みかねません。ですから、ある意味で現地人のプレッシャーになるように、押さえるべきところはきっちりと押さえておく必要があります」

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――その他、労務管理で注意すべき点としてはどのようなことがありますか。

 「感覚の差という点では、ひとつには残業が挙げられます。日本では、時間外になっても翌日の準備を済ませてから退社しようとしたり、仕事上の勉強などは自宅でやることが多いです。しかしアセアン諸国では、こうした日本的な"奉仕する精神"を要求することはできません。逆に言えば、100やるべきことを60くらいで終わらせて定時で帰宅する従業者が多い中、自分の足りないところを補おうと残業までする従業者は長期的にみれば伸びる人材であり、将来の中間管理職候補ともいえます。こうした従業者が自分の教育のために使う時間も『人材開発のための投資』とみなして、残業時間と認める必要があるでしょう」

――具体的にはどのような対策をとればよいでしょうか。

 「例えばシンガポールでは、月収1600ドル以上の従業者には残業代を支払う必要がない、と行政指導しています。そこで、月収2800~3000ドル位までは自己投資などのための残業時間も労働時間と認めて手当てを支払い、3000ドルを超えたら十分な技術力がある管理職候補者として残業代を支払わない、などという基準を設けるとよいでしょう」

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 優秀な人材定着につながる協調性の育成

 アセアン諸国での共通の問題として、人材の定着が挙げられる。優秀な人材は企業の無形財産ともいえる存在だ。特に、高度な技術内容を習得した従業員が退職すると企業は現実的に大打撃を受けることになり、しかも大量に発生すると法人自体の存亡問題にもなりかねない。

 「工員のように、高度な判断を要求されることなく引かれたレールの上を走るのは誰でもできます。しかし、『右に行くか、左に行くか』という経営にかかわる問題を経営陣とともに考え、判断できる現地の人材は非常に重要です」





――では、こうしたマネージャークラスの人材を社につなぎとめるにはどうすればよいのでしょうか。

 「なかには『お金さえもらえればいい』という人もいます。しかし、私が重点を置いているのは人間関係を緊密にするために定期的な会食や社員旅行、スポーツイベントといった交流の場を設けることです。こうしたイベントは確かにお金はかかり、日本的やり方であるとしても優秀な人材定着の一助になるのです」

国際化支援アドバイザー

数馬 輝明(かずま てるあき)

 化学メーカーを経て商社に入社。素材関連部署を経て、1987年にクアラルンプール駐在。電機?自動車部品生産の現地合弁会社業務に携わる。帰国後、ゴム部品の関連会社社長を経て大手メーカーに移り、シンガポールのManaging Directorに就任。現在この種のメーカーではアセアンNo.1企業に成長している。



(2005年12月 掲載)

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